低緯度オーロラの見方と撮影法:日本でも見える!?
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最終更新日:2014/09/22
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こんばんは、sky gazer の Iwasaki です。
先週の2014年9月13日に、日本各地で低緯度オーロラが見られるかもってことで、何十年に一度のチャンスと話題になりました。結局は空振りだったんですが、次のチャンスのとき、どんなふうに見ればいいのか解説してみます。
オーロラのメカニズム
宇宙(主に太陽)からやってきた電子や陽子(主に電子)が地球大気に衝突することで、空気分子が励起されて高エネルギー状態になり、元に戻るときに決まった波長の光を放出するのがオーロラ(極光)です。ネオン管の発光と原理は同じです。
オーロラに含まれる代表的な波長は、窒素が出す青色の 427.8 nm、酸素が出す緑色の 557.7 nm、酸素が出す赤色の 630.0 nm など。
それぞれの色光が発生する高さは、青色が 90〜120km、緑色が 100〜200km、赤色が 150〜600km だそうです(参考サイト:名古屋大学太陽地球環境研究所)。
地磁気緯度とオーロラ帯
オーロラは通常、オーロラ帯と呼ばれる地域近辺でしか見られません。その理由は、地球が巨大な磁石だからです。地磁気極(磁極とは異なる)は地理上の極とズレがあり、しかも少しずつ移動しています。2014年現在、地磁気北極はカナダ方向(西経73度、北緯80度)に、地磁気南極はオーストラリア方向(東経107度、南緯80度)にあると推定されます(このサイトで計算)。
オーロラ帯は、この地磁気極を基準とした地磁気緯度60〜70度のドーナツ型のエリアで、北半球と南半球に1つづつあります。南半球は南極大陸しか含まれていません。北半球はカナダ、米国アラスカ、スカンジナビア3国、シベリア、グリーンランドなど。
低緯度オーロラとは何か?
オーロラ帯よりも低緯度の地域で見られるオーロラが低緯度オーロラです。
1ヶ月に1度程度の頻度で太陽表面で大爆発(フレアやCME)が起き、その3日ほど後に太陽風(電子、陽子、ヘリウム原子核などのプラズマの流れ)が地球に到達しますが、磁気嵐を起こすほどのエネルギーがある場合に、低緯度にまでオーロラが出現します。
低緯度オーロラの見られる地域
いろいろな場所の緯度と経度から地磁気緯度を計算サイトで計算し、地磁気緯度の高い順に並べてみました。
番 地磁気 緯度 地名
1 69N 62N 加イエローナイフ
2 67N 70N ノルウェー トロムソ
3 60N 54N 加エドモントン
4 58N 56N 英エディンバラ
5 56N 47N 米メイン州
6 53N 48N 米シアトル
7 50N 41N 米ニューヨーク
8 50S 43S 豪タスマニア島ホバート
9 49S 45S NZダニーデン
10 45S 38S 豪メルボルン
11 45S 55S アルゼンチン南端
12 37N 45N 稚内
13 33S 34S アフリカ南端
14 27N 36N 東京
15 24N 34N 福岡
3番までがオーロラ帯の真っただ中、9番位までが地磁気緯度50度以上で低緯度オーロラが頻繁に見られる地域、12番以降は40度以下でめったに見られない地域って感じでしょうか。
低緯度オーロラといっても地磁気緯度50度以上の地域であれば、様々な色のオーロラが見えることもあります。
9番のニュージーランド南島南部ダニーデンで私が撮った緑色のオーロラ写真を貼っておきます。水平線のすぐ上の2本の帯がそれです(なんというショボさw)。↓
データ:キヤノン EOS-20Da、シグマ 8mmF4 円周魚眼、ISO 3200、F4、30秒、2009/02/14 2:43、トリミング
同じく南島南部のクィーンズタウンに在住してある日本人の方が、はるかに素晴らしい写真を撮られて写真集も出しておられます。何年かに一度でしょうが、天頂から降り注ぐカラフルなオーロラの写真もあります。
低緯度オーロラのメリット
低緯度オーロラのメリットは、何と言っても「寒くない」ってことです。オーロラ帯は北極圏や南極圏に近い地域なので、夏は白夜で暗くなりません。そのため、オーロラが見れるのは9月から3月くらいです。マイナス30℃とかの屋外に長時間居たくはありませんよね。
その点、地磁気緯度が50度以上で地理的緯度が40度前後のアメリカ北部やニュージーランド南部なら、夏でも短いながら真っ暗になる時間帯があります。実際、上の写真も2月の真夏にパジャマ姿で撮った写真です。
もちろん、出現頻度も規模もオーロラ帯と比べると桁違いに低いのが最大の弱点です。ですので、留学などの長期滞在や、何日にも及ぶ出張などで訪問する機会に、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
日本で見られる低緯度オーロラ
日本のように地磁気緯度40度以下の地域では、少し話が違ってきます。
めったに見られないだけではなく、通常は赤いオーロラしか見えないんです。このため、日本語では古来「赤気(せっき)」という名前で呼ばれていました。
メカニズムとしては SARアークと Broadband Electrons の2つがあるそうですが、いずれにせよ日本からだと、オーロラの非常に高い部分(200km以上)がおこぼれ程度に見えるだけで、それより低いカラフルな部分は、地球が丸いために地平線の下に隠されてしまうわけです。
日本での頻度
北海道では、10年に1度くらいの頻度で赤いオーロラが見られるとされてきました。しかし、名古屋大学が写真撮影による常時観測をしたところ、1998-2004年の7年間でなんと20回もの低緯度オーロラを観測できたそうです。暗いオーロラなら意外と頻度は高いんですね。
さらに低緯度の九州では、1770年9月17日に長崎で見られて以来、記録は無いようですが、写真なら10年に1度くらいは写るかもしれませんね。
いつ見られるのか?
長期的に見て、太陽の活動には11年周期があることが経験的に分かっています。今年か来年が極大期ですので、今がチャンスです!
本気でオーロラを見たいのなら、太陽の活動を監視する必要があります。そして、大規模な太陽フレアが観測されたら、その3日後を狙います。
監視には以下のサイトなどを活用するといいと思います。
27日の太陽周期に合わせたデータプロット
spaceweather.com
NOAA POES Auroral Activity
時間帯で言えば、午前0時に近いほど確率は上がります。日没後と日の出前の約1時間半の間は薄明が残っているので難しいでしょう。また、満月かそれに近い日も、暗いオーロラだと月光にかき消されてしまいます。
どんな見方がいいのか?
大規模な太陽フレアが起こって、日本各地で低緯度オーロラが見られそうなチャンスが来たとき、どんなふうに見ればいいのでしょうか?
まずは、あまり期待しないこと。
前回のように空振りが多いのは仕方ありません。また、出現したとしてもおそらく赤いオーロラだけでしょうから、よく写真で見るようなカラフルなオーロラを期待するのは禁物です。
しかも、よほど明るいオーロラでない限り、肉眼では赤色に見えません。ヒトの眼は暗所視では色を感じない桿体のみが働くからです。淡く白い雲のように見えるでしょう。
しかし写真に撮れば、しっかり赤く写りますので、雲ではなくオーロラであると確信できます。ですので、写真に撮ることを強くオススメします。
特に北海道や東北にお住まいの方は、大規模フレアの3日後に肉眼で見えなくてもコツコツ撮影していれば、年に数回は写る可能性がありそうです。ただし、多くのデジタルカメラの機種は 630.0 nm の赤に対する感度が低いので、フィルムカメラにするか、赤がよく写るデジカメを選ぶか、露出を長めにした方がいいと思います。
主な撮影条件は、上の写真のデータを参考にしてください。レンズは 35mm版換算で 20mm から 35mm 程度の広角の単焦点レンズ、F値ができるだけ小さい明るいものを選び、撮影時は絞り開放で。ピントはMFで無限遠に固定、ホワイトバランスは太陽光、ストロボは他の撮影者に迷惑なので厳禁です。
北半球の低緯度オーロラは、北の空の地平線近くに出ますので、北方向に街明かりなどの光害が少なく、邪魔な建物や山がない開けた場所で狙うと写る確率が上がります。
肉眼での観察の場合、眼を20分くらい暗順応させることをお忘れなく。
以上、低緯度オーロラについて解説しました。
やっぱり、一生に一度は 派手なオーロラが見たいですね。
てことで、ではまた!
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