フルサイズのイメージセンサー(撮像素子、撮像板)のメリット その2:光量不足・拡大に強い

公開日: : 最終更新日:2014/08/11 ブログ, 写真・カメラ

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こんにちは、Iwasaki です。
 

前回は、ボケ表現を使うなら 大きな撮像板が有利というお話でした。

今回は、光量不足の所で撮影するときや、拡大して見る場合には大きな撮像板が有利というお話です。
 

ケースその2:光量不足の所で撮影する

光量不足の所で撮影すると、撮像板サイズ(センサーサイズと言う人もいますが)で画質に差が出るのはなぜか?

受光素子の絶対感度が異なるからです。

受光素子というのは、撮像板を構成している1個1個の光センサーとそれに付随する回路などのことです。
ヒトの眼で言えば、視細胞に相当します。
受光素子の総数が画素数です。
隣り合う受光素子間の距離を画素ピッチといいます。

ちなみに、センサーサイズという言葉が出ましたが、その場合は撮像板全体のサイズという意味で、光センサーという言葉はそれぞれのセンサーを指します。1個でもセンサー、数百万個の集合体でもセンサーと呼ぶのは混乱の元なので、私自身は撮像板のことをセンサーとは呼ばないようにしています。
 

さてここで、フルサイズの800万画素、フォーサーズの800万画素、iPhone 5 の800万画素の3種類のカメラがあったとして、その受光素子がどうなってるか、具体的に考えてみましょう。

フルサイズは 36mm x 24mm の撮像板ですから、ひとつの受光素子の面積は、全体の800万分の1、つまり 108μm² となり、受光素子が正方形ならば一辺が 10.4μmとなります。

ところが、受光素子には回路なども必要なので、この 10.4μm四方の正方形の内部すべてが光センサーというわけではありません。仮に光センサーの受光面積が全面積の5割を占めている(開口率 0.5と言います)場合、一辺 7.35μmの正方形(と同じ面積)の光センサーが、回路などの隙間を隔てて、画素ピッチ 10.4μmごとに並んでいることになります。

フォーサーズの撮像板が同じ画素数、同じ開口率だとして同様の計算をすると、受光面積は、一辺 3.75μmと約半分になります(換算倍率がちょうど2倍なのに、ちょうど半分にならないのは縦横比が異なるからです)。iPhone 5 では、たったの 0.93μmです。

つまり、換算倍率が2倍ならば、1個の光センサーの一辺についても、フルサイズがフォーサーズの2倍(つまりフォーサーズはフルサイズの1/2、iPhone 5 は1/8)となります。

さて、受光素子の絶対感度は、素子の仕様が同じならば、素子内の光センサーの受光面積に比例しますので、絶対感度は換算倍率の二乗に反比例します。つまり、フォーサーズはフルサイズの約1/4、iPhone 5 は約1/64しかありません。

ところで、カメラの感度は ISO 800 などと ISO値で表されます。この数字が大きい方がより感度が高い、つまり より少ない光量で適正露出になるわけです。しかもカメラというのは、同じ被写体を、同じF値、同じシャッタースピード、同じ ISO値で撮った場合、どのカメラでも同じ露出となり、ほぼ同じ明るさの写真が撮れるように設計されています。

もし、フォーサーズ機に、マウントアダプターを介してフルサイズ機用のレンズを装着し、フルサイズ機のときと同じ被写体を、同じ撮影条件で撮影して、適正露出の写真が得られるなら、ISO値も同じでなければいけません。

ん? なんかおかしくないですか?

フォーマットが違っても適正露出の写真は撮れますよね。てことは、同じ ISO値に設定できるからですよね。

でもさっき、フォーサーズの受光素子はフルサイズの約1/4の絶対感度しかないと書きました。それなのに、なぜ同じ ISO値に設定できるのでしょうか?

読み返してもらえれば分かりますが、感度と絶対感度とは全く別物だからです。

フォーサーズ機は 絶対感度が1/4しかにないのに、フルサイズ機と同じ ISO値に設定できないと困るので、電子的に4倍余分に増幅しているんです。

実は、増幅しているのはフォーサーズ機だけではなく、フルサイズ機もやってます。だからこそ、ISO値を 100〜51200 などと、いろんな値に設定できるわけです。

フルサイズ機の絶対感度(増幅する前の感度)を仮に ZISO 1 として、増幅率を USO値と呼ぶことにしましょう。つまり、以下の関係です。

 ISO = ZISO x USO

増幅率を上げれば、ノイズもそれだけ増幅されて S/N比が低下し、ざらついた画質になります。USO値が800を超えるとノイズだらけになって、嘘八百の画像になると仮定します。
ここ、笑うところなんですが… ま、いいか
 

フルサイズ機は、ISO 800 に設定した時、USO 800 です。

一方、フォーサーズ機の絶対感度は、1/4 の ZISO 0.25 ですから、 ISO 200 で すでに USO 800 に達します。

iPhone 5 に至っては、1/64 の ZISO 0.015 ですから、 ISO 12.5 で USO 800 に!

つまり、フルサイズ機では ISO 800 から、フォーサーズ機なら ISO 200、 iPhone なら ISO 12.5からノイジーになり始めるわけです(最近は各社ノイズ処理が上手くなったので、実際はこの数字の4〜8倍位でしょうか)。

以上のように、光量不足で ISO値が高めになると、換算倍率の二乗に比例してノイズが増えるわけです。

最近のフルサイズ機の ISO値の上限は、51200 などと 目を疑うほど高いですが、ノイズ処理などで相当無理して画像を加工しているわけです。フォーサーズ機でその1/4の ISO 12800、コンデジで1/32の ISO 1600、iPhone で1/64の ISO 800 まで設定できるとしたら、それはフルサイズ機の ISO 51200 と同程度の無理をして作った画像だと考えていいと思います。
 

実際に、iPhone 5 の ISO 50 (= USO 3200) で撮った写真と ISO 800 (= USO 51200) の写真をピクセル等倍で比べてみましょう。

noise

上:18:21 日没直前  ISO 50 1/775s 4.13mm F2.4
下:19:01 日没40分後 ISO 800 1/15s 4.13mm F2.4

上の画像もノイズが少し出ていますが、下はノイズだらけですね。

元写真は、以前書いたこの記事の一番上と一番下の画像です。
 パンスターズ彗星は見れなかったけど黄昏の写真が撮れたからいいか

元記事の写真をよく見れば、ISO 800の方は、小さな写真なのにノイジーな画質であることが分かります。
 

さて、増幅率を無理に大きくしたときのデメリットは、もうひとつあります。階調飛びです。

フルカラーのデジタル画像というのは、1画素ごとに、RGBの三原色それぞれについて、256階調の明るさのうち、どれか1つの値を持っています。256
(0、255、0)が純粋な緑、(128、128、128)がグレイといった具合です。

このため、256³ = 約1670万階調 の色が表現できます。

「階調が豊かな写真」「なめらかな階調の写真」というのは、たとえば日没後の空の写真のように、連続的に色や明るさが変化していく画像の場合、隣り合う画素と画素の間で階調が変わるときに、この3つの数字それぞれが1づつ変化するような画像です。5,5,5,6,6,7,8,8,9,9という階調の画素が並んでいればOKです。

逆に5,5,5,5,5,10,10,10,10,10というふうにポンと5つも飛んでしまうのが階調飛びです。階調のヒストグラムを取るとグラフが櫛(クシ)状にギザギザしています。画像でいえば、256色のインデックスカラーみたいになって、写真というより絵の具で塗った絵のように見えます。

この階調飛びは、増幅率を上げれば上げるほど大きくなります。
つまり、ノイズと同様に USO値に比例してひどくなります。

階調飛びは拡大するほど見えやすくなりますが、ひどい時には拡大しなくても見えます。

Photoshopのレベル補正をいじって、わざと10階調の階調飛び画像を作ってみました。

F2.5tobi

1円玉など、細かい模様がある部分では目立ちませんが、なめらかに階調が変化している、背景のボケた部分で階調飛びの様子が分かると思います。

これほどひどい階調飛びは、さすがに最近のデジタルカメラではお目にかかれないと思いますが、ビデオ画像を一旦停止すると、見えることがよくあります。

以上のように、ノイズと階調飛びは、設定する ISO値が高いほど、また撮像板サイズが小さいほど起きやすく、その分 画質が低下します。

また、ノイズと階調飛びは、ISO値ではなく、それに換算倍率の二乗を掛けた USO値に比例します。
 

ケースその3:大きく拡大して見る

上に述べたノイズはピクセル単位で発生します。したがってピクセル等倍ちかくまで拡大して鑑賞すると、ノイズが丸見えになってしまいます。また、階調飛びも拡大するほど目立つようになります。

1番目の組写真と元画像とを比べればハッキリ分かりますが、表示倍率が小さいほど、ノイズが平均化されて目立たなくなります。

また、ノイズ処理というのは、大雑把に言って周囲の画素からコピーして、ノイズの画素を塗りつぶすような処理ですので、あまりにノイズがひどいと、1番目の組写真の下の画像(ISO 800)のように、細かい模様が塗りつぶされて見えなくなり、結果として解像度が下がります

以上が、拡大して見たときに フォーマットによる差が出やすい理由です。
 

その他の違い

以上、フォーマットによる写真の違いを説明しましたが、フォーマットそのものではなく、それに付随する違いがいくつかあります。

たとえば、子供や他人を撮影する場合、大きなカメラを構えると警戒されてしまったり、一眼レフの大きなシャッター音だと動物に逃げられたりする、という欠点があります。

逆にモデルさんを撮影する場合などには、大きくて高価そうなカメラの方が信用してもらえたり、一眼レフの大きなシャッター音の方がノリがいい、という事もあるそうです。

また、魚眼レンズ、超広角や超望遠レンズなど、特殊なレンズを使いたい場合、小さいフォーマット用にはラインナップされてない場合が多いです。特に、ミラーレス一眼はまだ未成熟なので、レンズの種類は少ないです。

このように、どんな写真を撮りたいのか、どんな撮影スタイルなのかが決まれば、自分に合ったフォーマットが絞られて来ます。
 

次回はちょっと脇道にそれますが、USO値や画素数について補足的なことを書くつもりです。
 

てことで、ではまた!

 

2013/04/21 追記

この記事で出てきた言葉や関連用語を整理しておきます。
いろんな使い方があるようですが、この記事内ではこういう意味で使ってます。
()内は、世間ではよく使われるけど、ここでは使っていない用法です。

撮像板 = 撮像素子 = 固体撮像素子 = イメージセンサー(= センサー)

撮像板サイズ = フォーマット(= センサーサイズ)

受光素子 = 光電変換素子 = 光センサー+回路など(= 撮像素子?)

光センサー = フォトディテクター = フォトダイオード

 

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