サルにもできる(?)霧箱の作り方 その3

公開日: : 最終更新日:2012/08/27 ブログ, 自然・科学・計測・原発

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こんにちは、Iwasaki です。

前回に引き続き、第3回は霧箱で見えた放射線がどこから来たのかのお話です。

 

【自然放射線はどこから来るのか?】

内外被曝合算の補足説明にも書きましたが、人間は世界平均で以下のような様々な自然被曝をしています。

宇宙線        390 μSv / 年
地殻、建材など    480 μSv / 年  ウラン系列、トリウム系列、それらの娘核種など
外部被曝小計     870 μSv / 年

経口摂取       290 μSv / 年  カリウム40など
吸入摂取      1260 μSv / 年  空気中のラドン222など
内部被曝小計    1550 μSv / 年

内外被曝合算    2420 μSv / 年  (日本平均は 1480 μSv / 年)

 

【宇宙線に由来する放射線】
1次宇宙線(太陽や宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線)の大部分は高速の陽子線です。1次宇宙線は大気層で空気の原子に衝突し、β線、γ線、陽電子、π中間子などの2次宇宙線を発生させますが、地上に到達するのは大半がミューオンで、1平方メートルあたり1分間に約1万個降ってくるそうです。ミューオンの透過力はきわめて強いので、建物や人体を通過して霧箱に飛び込み、長く直線的な飛跡として観察されます。ちなみにニュートリノも沢山降ってきますが、霧箱では検出されません。

 

【地殻、建材などに由来する放射線】
地殻、建材(特にコンクリート)などには、ウラン系列、トリウム系列、それらの娘核種などが微量ながら含まれ、中でも花崗岩には多く含まれています。それらからα線、β線、γ線が放射されますが、霧箱内に到達できるのは、透過力の強いγ線と一部のβ線でしょう。

 

【カリウム40に由来する放射線】
カリウム40は9割がβ崩壊、1割が電子捕獲してアルゴン40になったあと γ崩壊するとされています。人体は4000Bq程度のカリウム40を含んでいるので、霧箱にかじりつい見ているあなたの体に含まれるカリウム40由来のβ線やγ線も、もしかしたら見えているかもしれません。他の放射線との区別はできないでしょうが。

 

【ラドンに由来する放射線】
土壌、岩石、コンクリートなどに含まれるウランやトリウムが崩壊すると、それぞれラドン222(狭義のラドン、半減期3.8日)とラドン220(別名トロン、半減期56秒)になります。どちらも気体ですので空気中に放出されます。トロンは半減期が短いので霧箱の中には混入しませんが、ラドン222は霧箱に混入してα線を出します。自然被曝の半分が、このラドン222を吸入したことによる内部被曝です。コンクリートの家に住んでる人は換気に注意したほうがいいかもしれません。

シリーズ第1回で、放射線源としてランタンをリストアップしましたが、これに添加されている元素はトリウムです。ランタンの一部を切り取って竹串などの先端に固定し、霧箱のラップの端に穴を開けて有感領域に差し込むと、トリウムが崩壊するときに出るα線が観察されます。ランタン片からα線が放射状に出る様子は、まるで線香花火のようです。


また、ランタンが入っているビニール袋内の空気にはトロンが含まれていますので、スポイドで空気を吸って霧箱内に入れると、もっと面白いものが見られます。トロンはα線を出してポロニウム216になり、その直後(半減期0.15秒)に再びα崩壊して鉛212になりますので、短時間に2回ものα線が放出されます。その結果、霧箱内に松葉の形あるいはVの字型のα線飛跡がはっきりと観察できます。2本のα線が出る時間差が、0.15秒を中心に短かったり長かったりするので、崩壊がランダムな現象であることを実感できます。

 

【自然放射線源のまとめ】
霧箱で見られる自然放射線のうち、α線はほぼすべてラドン由来、β線は空気中の放射性元素から出るβ線もありますが、宇宙線の中でエネルギーの強いγ線によって、通り道にある原子から電子が弾き出されてβ線として見られる場合もあるそうです。それらの比率は私には分かりません。γ線は透過力が強いので地殻、カリウム40、ラドンの娘核種など、さまざまな由来のものが混じっていると思われます。

 

【東電原発事故による放射線は?】
霧箱はきわめて感度が高いので検出には向いていますが、有感領域の大きさが不安定なので、量的な計測には全く向いていません。また、β線やγ線はそこらじゅうに飛び交っていますので、原発事故由来かどうかを区別するには、極端な差がない限り難しいと思います。

しかし、ウランやプルトニウムなどのα核種を検出するのは可能かもしれません。ベランダに積もった土埃や土壌表面などを、竹串の先に付けて霧箱の有感領域に挿入し、深いところから採取した土壌と比べて、明らかにα線が増えるようならば、事故によってα核種が堆積した可能性があります。

もしそのような観察をされた場合には、ぜひご一報ねがいます。

 

次回は、より良く見るための工夫を書くつもりです。

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